工場の遮熱対策は屋根の外側?内側?同条件で比較した実測データで比較して分かった選び方

工場や倉庫の暑さ対策を検討すると、「屋根の外側に遮熱材を施工する方法」と「屋根の内側に遮熱シートを施工する方法」のどちらを選べばよいのか迷われる方も多いのではないでしょうか。

一見すると似た遮熱工法ですが、この2つは競合する製品ではありません。熱を抑える仕組みや施工方法が異なるため、建物や運用条件に合わせて選択する工法です。

本記事では、実際の工場をイメージした折半屋根付きミニチュア工場を3台製作し、同じ場所・同じ時間・同じ気象条件で比較測定を行いました。

比較したのは次の3つの条件です。

  • 無対策の折半屋根
  • 屋根外側遮熱「ルーフシェード」
  • 屋根内側遮熱「クールフェイス」

取得した実測データをもとに、それぞれの特徴や違い、現場に適した選び方について解説します。

本記事について

本記事で紹介する内容は、条件を統一して実施した比較試験の参考実証データです。

実際の工場では、建物の大きさや屋根材、断熱性能、換気量、風速、日射条件などによって温度は変化します。本記事は実際の温度を保証するものではなく、遮熱対策による違いを比較するための参考資料としてご覧ください。


目次

  • 工場が暑くなる本当の理由
  • 屋根外側と屋根内側では遮熱の仕組みが違う
  • ミニチュア工場による比較実験について
  • なぜミニチュア工場で比較したのか
  • このデータは実際の工場でも参考になるのか
  • 実測データで比較してみた
  • 温度差以上に重要なのは「熱の入り方」
  • どちらを選ぶべき?
  • 遮熱はエアコンの代わりではなく補助
  • まとめ

工場が暑くなる本当の理由

折半屋根から工場内へ熱が伝わる仕組み

夏になると外気温は35℃前後どころか40℃を超える日が増えてきています。折半屋根そのものの温度は70~80℃にまで上昇します。

晴天時の日射量は約800〜1,000W/㎡にも達するとされており、金属製の折半屋根は日射の影響を受けやすい構造です。

折半屋根は、

  • 熱容量が小さい
  • 熱伝導率が高い

という特徴があるため、日射を受けると短時間で高温になります。

高温になった屋根は、輻射熱伝導熱として室内へ熱を伝え続けます。

つまり、工場内が暑くなる原因は外気温だけではありません。

屋根そのものが大きな熱源となり、室内へ熱を供給し続けていることも大きな要因です。

そのため、工場の暑さ対策では「屋根から侵入する熱」をどのように抑えるかが重要になります。


屋根外側と屋根内側では遮熱の仕組みが違う

どちらも遮熱対策ですが、熱を抑える位置が異なります。

比較項目 屋根外側遮熱(ルーフシェード) 屋根内側遮熱(クールフェイス)
熱を抑える仕組み 日射を遮る事で屋根そのものの温度上昇を抑える 屋根から伝わってくる輻射熱を反射する
屋根表面温度 下がりやすい 大きく変化しない
室内への熱 抑える 抑える
施工位置 屋根の外側 屋根の内側
向いている現場 屋外施工可能で工場を止められない 屋内施工で工場を止める事が出来る

重要なのは、

どちらも熱を減らすことを目的としていますが、その方法が異なるという点です。

そのため、「どちらが優れているか」で選ぶのではなく、

  • 屋根へ上がって施工できるか
  • 工場を止められるか
  • 建物の構造はどうか

など、現場条件に合わせて選択することが重要になります。

一見すると、ルーフシェードが工場を止めないで施工可能とありますが、真夏とそれ以外の時期では施工スピードやコストが全く違いますし、天候によっても施工の可否がでてきます。一方でクールフェイスは屋内施工なので、施工の段取りさえ組めれば季節や天候に左右されずに行程通りに取付する事が可能です。


ミニチュア工場による比較実験について

今回の比較試験では、屋根材だけを並べて温度を測定したのではなく、実際の工場をイメージした折半屋根付きミニチュア工場を3台製作し、それぞれ異なる条件で比較を行いました。

比較した条件は次の3パターンです。

  • 無対策の折半屋根
  • 屋根外側遮熱「ルーフシェード」
  • 屋根内側遮熱「クールフェイス」

3台とも、

  • 同じ場所
  • 同じ方角
  • 同じ時間帯
  • 同じ気象条件

で設置し、外気温とあわせて一定間隔で温度を測定しています。

実際の工場と全く同じ環境を再現することはできませんが、比較条件をできる限り統一することで、遮熱対策による違いを確認しやすい環境を整えました。

なぜミニチュア工場で比較したのか

遮熱対策の効果を正確に比較するためには、本来であれば同じ構造・同じ大きさの工場を3棟用意し、それぞれ異なる遮熱対策を施工したうえで、同じ天候・同じ季節・同じ条件で測定することが理想です。

しかし、実際にはこのような比較試験を行うことは現実的ではありません。

例えば、

  • 同じ工場を3棟用意する
  • 屋根だけ異なる仕様にする
  • 同じ日に同じ日射条件で測定する

といった条件を揃えることは非常に難しく、多くの時間やコストが必要になります。

そこで今回は、比較条件をできるだけ統一しやすいよう、折半屋根付きのミニチュア工場を製作し、遮熱対策の違いだけを比較できる環境を構築しました。

このような比較方法は、建築や熱環境の評価においても、条件を揃えて性能差を確認するための考え方の一つとして用いられています。

もちろん、ミニチュア工場は実際の建物を完全に再現したものではありません。しかし、同じ条件で比較することで、それぞれの遮熱工法の特徴や傾向を把握するための参考データとして活用できると考えています。


このデータは実際の工場でも参考になるのか

実際の工場では、

  • 建物の大きさ
  • 屋根材の種類
  • 断熱材の有無
  • 天井高さ
  • 換気量
  • 開口部の大きさ
  • 風速や周辺環境

など、多くの条件が異なります。

そのため、本記事で紹介する温度が、そのまま実際の工場で再現されることを示すものではありません。

一方で、日射を受けた金属屋根が高温になり、その熱が室内へ伝わるという基本的な熱の流れは、多くの折半屋根の建物に共通しています。

今回の比較試験では、測定条件を揃えたうえで3つの工法を比較しているため、

  • 無対策と比較した場合の違い
  • 屋根外側施工と屋根内側施工の特徴
  • 温度変化の傾向

を把握するための参考資料としてご覧いただけます。

実際に遮熱対策を検討する際は、本記事のデータに加え、建物の構造や運用状況、施工条件なども考慮したうえで最適な工法を選定することが重要です。


実測データで比較してみた

今回の比較試験では、

  • 無対策の折半屋根
  • 屋根外側遮熱「ルーフシェード」
  • 屋根内側遮熱「クールフェイス」
  • 外気温

を同じ条件で測定しました。

グラフを見ると、日射量が増える時間帯にあわせて無対策の折半屋根は大きく温度が上昇し、今回の測定では最も高い温度を示しました。

一方、ルーフシェードとクールフェイスは、どちらも無対策の折半屋根と比較すると温度上昇を抑える傾向が見られました。

また、今回の測定では、ルーフシェードとクールフェイスの温度推移は非常によく似た結果となっています。

このことから、今回の比較試験で重要なのは「どちらの商品が優れているか」を判断することではありません。

屋根の外側から対策する方法と、屋根の内側から対策する方法のいずれも、無対策と比較すると熱の影響を抑える傾向が確認できたことが、この実験で得られた大きな結果だと考えています。

さらに、それぞれ施工方法や適した現場が異なるため、温度だけで優劣を判断するのではなく、建物の状況や施工条件を踏まえて選択することが重要です。


温度差以上に重要なのは「熱の入り方」

間温度」と「熱負荷(時間の積み重ね)」を比較したイメージ図

グラフを見ると、「数℃しか違わない」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、工場の暑さ対策では瞬間的な温度差だけでなく、熱が入り続ける時間にも注目する必要があります。

例えば、朝から夕方まで日射を受け続ける工場では、屋根から熱が数時間にわたって室内へ伝わり続けます。

そのため、重要なのは「最高温度が何℃だったか」だけではなく、一日を通してどれだけ熱の流入を抑えられるかという視点です。

今回の比較試験でも、ルーフシェードとクールフェイスは、日射の影響を受ける時間帯を通して、無対策の折半屋根より低い温度で推移する傾向が見られました。

このような温度差の積み重ねは、工場内へ流入する熱負荷の低減につながる可能性があります。

もちろん、実際の効果は建物の規模や空調設備、換気条件などによって異なりますが、遮熱対策を検討する際には、瞬間的な温度差だけではなく、一日を通した熱の入り方にも着目することが大切です。

どちらを選ぶべき?

遮熱対策は、「屋根外側施工の方が優れている」「屋根内側施工の方が効果が高い」というように一概には判断できません。

重要なのは、建物の構造や施工条件に適した工法を選ぶことです。

屋根外側遮熱「ルーフシェード」が向いているケース

ルーフシェードとクールフェイスの施工イメージ

次のような現場では、屋根外側施工が適しています。

  • 屋根の形状が折半屋根でハゼ式である
  • 屋根へ安全に上がって施工できる
  • 中の操業を止める事が困難

屋根へ届く日射を最初に抑えるため、屋根自体の温度上昇を軽減したい場合に適した工法です。


屋根内側遮熱「クールフェイス」が向いているケース

次のような現場では、屋根内側施工が適しています。

  • 既設工場で屋根改修が難しい
  • 屋根へ上がる施工が難しい
  • 室内側から施工したい

屋根から放射される熱の影響を軽減することで、既設工場でも導入しやすい点が特長です。


現場条件に合わせた選択が重要

今回の比較試験では、ルーフシェードとクールフェイスは、どちらも無対策と比較して温度上昇を抑える傾向が確認されました。

一方で、今回の測定結果だけでは「どちらが優れている」と結論付けることはできません。

遮熱対策を選定する際は、

  • 建物の構造
  • 屋根へ施工できるか
  • 操業を停止できるか
  • 工事期間
  • メンテナンス性
  • ご予算

などを総合的に考慮することが大切です。


遮熱はエアコンの代わりではなく、暑さ対策の一つ

遮熱対策だけで、

「工場内が35℃から25℃になる」

というものではありません。

しかし、屋根から侵入する熱を抑えることは、

  • 空調設備の負荷軽減
  • 作業環境の改善
  • 室内温度の上昇抑制

などにつながる可能性があります。

近年では、遮熱対策単独ではなく、

  • 間仕切りカーテン
  • スポットエアコン
  • 大型シーリングファン
  • 換気設備

などと組み合わせ、工場全体の熱環境を改善するケースも増えています。

工場ごとに建物の構造や設備は異なるため、それぞれの環境に合わせた暑さ対策を組み合わせて検討することが重要です。


まとめ

今回の比較試験では、折半屋根付きミニチュア工場を用いて、無対策・屋根外側遮熱・屋根内側遮熱の3つの条件を同一環境で比較しました。

その結果、今回の条件下では次のような傾向が確認されました。

  • 無対策の折半屋根は日射の影響を受けやすく、高温になりやすい傾向が見られた
  • ルーフシェードとクールフェイスは、どちらも温度上昇を抑える傾向が確認された
  • 今回の測定では、両者の温度推移に大きな差は見られなかった
  • 屋根外側施工・屋根内側施工は、それぞれ適した施工条件や導入方法が異なる
  • 遮熱対策は、建物や運用状況に合わせて選択することが重要である

本記事で紹介したデータは、条件を統一して実施した比較試験による参考実証データです。

実際の工場では、建物の規模や屋根構造、断熱性能、換気条件などによって結果は異なりますが、遮熱対策を検討する際の一つの参考資料としてご活用いただければ幸いです。


よくあるご質問(FAQ)

Q. ルーフシェードとクールフェイスは、どちらの方が遮熱効果が高いですか?

今回の比較試験では、どちらも無対策と比較して温度上昇を抑える傾向が確認されました。一方で、今回の測定結果だけで優劣を判断することはできません。建物の構造や施工条件に合わせて選定することが重要です。

Q. ミニチュア工場のデータは実際の工場でも参考になりますか?

実際の温度を保証するものではありませんが、条件を揃えて比較した参考実証データとして、遮熱対策の違いを把握するための資料になります。

Q. 遮熱対策だけで工場内は涼しくなりますか?

遮熱対策は屋根から侵入する熱を抑えるための方法です。建物の条件によって効果は異なりますが、エアコンや換気設備、間仕切りなどと組み合わせて検討することで、より効果的な暑さ対策につながる場合があります。